平成23年12月28日
会員 各位
一般社団法人 日本病院薬剤師会



フィンゴリモド製剤の適正使用について


 多発性硬化症治療剤フィンゴリモド(以下、本剤)(商品販売名:イムセラ®カプセル0.5mg 製造販売元:田辺三菱製薬株式会社)(商品販売名:ジレニア®カプセル0.5mg 製造販売元:ノバルティスファーマ株式会社)は、平成23年11月25日に薬価収載され、11月28日に発売されました。
 今後、限られた治療法しかない多発性硬化症の治療薬として、多くの患者に使用される可能性がありますが、重篤な副作用を起こす可能性がありますので、注意深く使用することが重要です。
 本剤は、国内外での使用経験が限られており、患者の安全性確保並びに適正使用の観点から、本剤を使用できる施設の要件が定められており、その条件を満たせない場合は処方することが出来ません。現時点では、10施設程度が企業と連携をとって使用していますが、新たに処方される病院では、薬剤師が製薬企業と連携をとりながら安全に使用することが重要です。その中でも特に「重篤な副作用へ対応できる診療体制が取られている施設であること」という項目については、薬剤師として関わらなければなりません。
 本剤の重篤な副作用等に関する基本的注意について以下のとおりです。


(1)徐脈性不整脈
●本剤の投与開始時には一過性の心拍数低下、房室伝導の遅延が生じることがあり、徐脈性不整脈に関連した徴候または症状を確認するため、初回投与後少なくとも6時間はバイタルサインの観察を行い、必要に応じて心電図の測定を実施すること。
●2週間を超える休薬後に投与を再開する場合は、心拍数及び房室伝導に対する影響が認められるおそれがあるため、初回投与時と同様の注意、観察を行うこと。

(2)感染症
●本剤の薬理作用(末梢血中のリンパ球減少作用)により、本剤投与中に細菌、真菌、ウイルス等による感染症が現れることがある。
●本剤投与開始前に血液検査(血球数算定等)を行うとともに、投与中には定期的(投与開始15日後、1,2,3,6ヶ月後、それ以降は3ヶ月ごと等)に血液検査を実施すること。
●本剤投与開始前に水痘または帯状疱疹の既往や予防接種の有無を確認し、必要に応じてワクチン接種を考慮すること。

(3)黄斑浮腫
●無症候性を含め、特に本剤投与初期には黄斑浮腫が現れることがある。
●黄斑浮腫の初期は視覚症状を伴わない場合があるため、早期発見のためにも、本剤投与開始3〜4ヶ月後に眼底検査を含む眼科学的検査を実施し、その結果を入手すること。

(4)肝機能異常
●本剤投与中に肝機能検査値異常(ALT、AST、γ-GTP等の上昇)が現れることがある。
●本剤投与開始前に肝機能検査(トランスアミナーゼ、ビリルビン等)を実施するとともに、本剤投与中は定期的に肝機能検査を実施すること。

(5)生殖毒性
●妊娠可能な妊婦に対しては、本剤の投与を開始する前に、患者が妊娠していないことを確認すること。また、本剤投与期間中及び最終投与2ヶ月間は適切な避妊を徹底するよう指導すること。


 会員各位は、上記の詳細な理由等について、別添1〜3及びインタビューフォームをご覧いただき、医師、薬剤師等の関係者に情報提供をするとともに、本剤の適正使用には十分に留意するようお願いします。
 なお、インタビューフォームにつきましては、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページよりご確認下さい。













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